細胞診検査の固定方法及び注意事項

標本固定方法

固定は細胞の変性、融解等の変化を停止することが目的です。従って塗抹後直ちに固定して下さい。

湿潤固定

(パパニコロウ染色、PAS染色等に用います。)
塗抹したスライドガラスをアルコール入りスライド立て(容器D)に30分以上浸して固定して下さい。

塗抹したスライドガラスに液がしたたるくらいの量でスプレーしてください。

※塗抹後固定前に乾燥させてしまいますと細胞が変性し、適切な標本作製及び判定ができなくなる恐れがありますので、塗抹後直ちに固定するようにしてください。

乾燥固定

(ギムザ染色等に用います。)
塗抹後、直ちに塗抹面をドライヤー(冷風)で乾燥させて下さい。




スライドガラスのフロスト部分に鉛筆で、採取日、患者名、材料名、湿固定、乾固定の別を明記してご提出下さい。
細菌検査および一般検査とは別にご提出下さい。

1 擦過標本

子宮膣部・頸部・乳頭部・歯肉など

必要スライド枚数:婦人科検体(湿固定1枚)、気管支擦過、乳頭部、歯肉等(湿固定2枚)

擦過標本
注意事項 塗抹時の乾燥を防ぐため、標本作製は必ず採取現場で行い、塗抹後、瞬時に固定液に入れて下さい。
乳頭部や歯肉などを擦過する場合は、歯間ブラシなどの使用を推奨します。
また痂皮がある場合は取り除いてから擦過して下さい。
ヘルペス感染が疑われる水疱の場合は、包皮を取り除き、水疱の底部を擦過して下さい。
2 喀 痰

必要スライド枚数:湿固定2枚

注意事項 癌細胞は、血痰部・不透明白濁部・ゼリー状粘液部に多く含まれるため、その部分から採取して下さい。
すり合わせ時に力を入れすぎたり、必要以上に何度もすり合わせると細胞が挫滅しますのでご注意下さい。
3日連痰の場合は、E容器にてご提出下さい。
蓄痰材料の場合は、F容器にてご提出下さい。
3 液状検体

体腔液

必要スライド枚数:湿固定3枚、乾燥固定1枚

注意事項 患者様をベッドで2〜3回体位を変換させてから穿刺採取して下さい。
生検体の場合は、D容器に入れて冷蔵保存して下さい。

尿・髄液

必要スライド枚数:
尿/湿固定1枚、乾燥固定1枚  髄液/湿固定1枚、乾燥固定1枚

注意事項 検尿カップに採取後30分から1時間静置し、上清を静かに捨てて、底部より10ml残し、混和後スピッツに移して下さい。生検体の場合は、D容器に入れて冷蔵保存して下さい。

胆汁・膵液

必要スライド枚数:湿固定1枚、乾燥固定1枚

注意事項 消化酵素による細胞変性が急速に進むため、検体は氷の中に採取管を立てて採取し直ちに遠心、塗抹、固定まで完了させて下さい。生検体の場合は、D容器に入れて冷蔵保存して下さい。
4 穿刺吸引標本など

乳腺・甲状腺など

必要スライド枚数:湿固定1枚、乾燥固定1枚

注意事項 穿刺前、穿刺針を生食水などで湿らせないで下さい。
採取検体は微量であることが多く乾燥しやすいため、標本作製は必ず採取現場で行い、塗抹後、瞬時に固定液に入れて下さい。
塗抹後に針・注射筒を穿刺針洗浄液にて2〜3回洗浄し、提出して下さい。(容器H)
依頼書の臨床所見に画像所見及び、左右別、部位、腫瘍サイズなどできるだけ詳細に記入して下さい。
乳腺などで、左右同時に検体を採取された場合は、依頼書も左右2枚ご提出下さい。
※スライドガラスに吹き出した際、血液成分が多い場合は、スライドガラスを傾け、できるだけ流し落として下さい。